クールな御曹司の契約妻になりました
「香穂、どうして成松に頼る?」

えっ?

抱きしめられたまま千裕さんの苦し気な言葉が頭の上に降ってくる。

「どうして、困ったことを俺に頼らない?香穂にとって俺はそんなに頼りないのか?」

千裕さんのどこか寂し気に泣き出しそうな声が私の心を震わせる。

私は小さく何度も首を横に振って否定する。

「じゃあ、どうして?!成松ばかりに頼る?もしかして香穂は、成松のこと……」

抱き寄せていた私を引き剥がし、痛みすら覚えるほどの力で私の両肩を千裕さんが掴む。

真剣で真っすぐな、殺気迫るような眼差しに見つめられた私は、いたたまれなくなって逃げ出すようにその視線から顔を背けた。

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