クールな御曹司の契約妻になりました
「クローゼットの服も制服貸与だと思いなさい。その指輪だって同じだ。」

夫婦ではなく、雇用主と従業員という関係だと改めて思い知った気がする。


私が急に口を噤むと、千裕さんは少しだけ息を漏らすようにして笑いながらソファーに身体を沈めるようにしてワインを喉に流し込む。

喉仏が上下に動き、その仕草に色気すら覚える。


「香穂、もし気が変わって君が欲しいものがあれば、何でも買ってやる。ワガママだって言っても構わない。形だけでも夫婦なのだから」

一口だけワインを飲んだ千裕さんが余裕たっぷりにそう言った。


な、なんなんだ、この人は?!

私は怒りを通り越して、呆れてしまう。

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