クールな御曹司の契約妻になりました
「去年、社長に就任してから独身というだけで縁談の話が増えた。会長の親父まで最近は、結婚しろとうるさく言ってくる始末だ」
ははは、と苦笑いしてグラスに残ったワインを一気に飲み干した千裕さん。
「だけど、千裕さんみたいな方なら結婚したいっておっしゃる女性もきっとたくさん……」
「愛だとか、恋だとか、そんな面倒なことは俺の仕事の邪魔だ。それに会社を大きくするための縁談なんか馬鹿らしい。俺は自分の実力でこの会社を大きくしたいだけだ」
私の言葉を遮った千裕さんの言葉には冷たい棘があって、これ以上契約結婚の理由に触れるなという無言のオーラすら漂っているような気さえする。
ふと、初めて会った時に感じた千裕さんの後ろの人影がほんの一瞬だけど曇った気がした。