クールな御曹司の契約妻になりました
「その点、契約結婚は、面倒くさくなくていいと思った。それだけだ。」
つまり契約結婚したことで、会長であるお父様からの縁談話もなくなる。
千裕さんにとっては面倒だと思える恋愛も、女性が近づいてくることが無くなるから結婚することでしなくていいということか……。
「香穂だって、この結婚には何か目的があるんだろ?」
悶々と千裕さんの考えが納得できずに口を噤んでしまった私に、何かを探るような目つきで今度は千裕さんが私に尋ねる。
「わ、私はっ、就職先が決まらなくて、教授の紹介だったからで……」
「へぇ」
完全に見下されている表情を向けられ、ちょっとだけムッとする。
「確かに、他の求人よりお給料だって高いし、福利厚生だって良かったし。だけど、契約結婚だなんて知らなかったんです」