好きな人に恋愛相談されました。
 

無言でいると、高梨が俺を窺うように下から顔を覗き込んできた。


「ねぇ、堺、なんか様子おかしくない? 具合悪いの?」

「いや、別に普通だけど」

「ほんと? それならいいけど……」


俺は悟られないように唇の端を上げるけど、いつもよりも素っ気ない俺に高梨は少し心配そうな表情をしている。

俺と高梨は20センチほどの身長差があり、こうやって立っていると普段教室で座っているとき以上に、高梨は小さく感じる。

この小さい身体を、何度俺の腕の中にすっぽり包んでしまおうかと思ったか……。

今だって、頬を染めて白い息を吐き出す高梨を抱きしめたくて仕方がない。


「あのね、堺に話したいことがあるの」


切り出した高梨に、思わず小さく眉をひそめる。

このタイミングで話? そんなの、ろくなことじゃないに決まってる。

恋愛相談したからって、わざわざ告白の報告なんてしなくていいのに。


「……明日じゃダメ?」

「……うん、今日がいい」


きっと俺の行き場のない苛立ちは表に漏れていて、高梨も気づいているだろう。

でもこれ以上、平静を装うことはできないし、黙ってさっさと聞いてしまおうと、仕方なくうなずいた。

「堺、」と高梨がどこか緊張感を持って俺の名前を呼んだとき、50メートルほど先にある校門の方から「後5分で出なさい!」という教師の声が聞こえた。

ナイスタイミング。

「歩きながら話そ」と俺が歩き出そうとしたとき、高梨が「待って!」と俺を呼び止めた。

 
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