甘い脅迫生活
私的には、社長より山田さんの方が苦手だと思った。社長は何となく、どこかで一歩引いてくれるところがある。こうして脅迫されているのに私が頷いていないのがそれを証明していた。
これ以上踏み込まれたらだめだというラインを社長は踏みこまない。
それはわざとなのか、それとも優しさなのか。
だけどはっきり分かるのは、山田さんはそれを超える人間だ。ただの直感だけど、あの人からは禍々しい鬼畜の匂いがする。
スマホを再びポケットに閉まった社長は、なぜか私の隣に座った。私の後ろの背もたれに手を回して、腰と腰を密着させて。
「社長、近いです。」
「わざとだよ。」
何をいけしゃあしゃあと。目を見開く私を面白がっているらしい社長は、ジッと見つめてきていて……正直、困る。
「何が不満かな?俺は結婚相手として相応しくない?」
「……脅迫してる時点でそういう問題じゃないと思います。」
反論をしながらも、指先で社長の腕やらを押して距離を離そうとしてみる。なのに配送部で荷物を運んでいる時ほど力を出せていないのは、社長のイケメン力に自分の理性が負けかけているということに他ならない。
だめだ。キラキラフェイスに目がくらむ。