甘い脅迫生活
「奥様は、どうされたのですか?」
「さぁ。いきなりむくれたんだ。」
山田さんの質問に答えた社長は、本当に不思議そうに笑っている。
その頬は少しだけ赤い。最後の身体発言であまりにもイラついた私が頬をつねったからだった。
「奥様、本日はお宅にお送りいたしますが、お食事のご用意をしておりますので、一旦、社長のご自宅へどうぞ。」
「いりません。帰ります。」
きっぱりと断ってやった。できるならこれからもあの家には行きたくはないくらいだ。
同時に、私は自分に腹が立っていた。確かに、イケメン。
「なぜだ。山田の料理は美味しいぞ?」
所作も上品で、笑顔も素敵。ゾクゾクするほどの色気は、私の女としての部分を刺激してくる。まさに一級品の男性。でもだからって私、流されすぎじゃないの?
顔が良ければいいのか!私!
「知ってほしい、美織にも。山田の手料理の味を。」
「……それはそれでなんとなく嫌なんですけど。」
自分に目を覚ませと言ってるくせに、こういうくだらないことに嫉妬まがいの感情を持ってしまうなんて。ほんとに、自分がよく分からない。
首を傾げる社長は、私の複雑な心をお分かりいただけていないようで。なんとなく、がっくりしてしまう。
「奥様。社長は女性の心をきちんと理解されております。」
山田さんの抑揚のないその言葉にムッとする。
そりゃそうでしょうよ。こんなに素敵な人に女性が寄ってこないわけがない。