甘い脅迫生活
「それにしても先輩ー。」
「ん?」
「残念ですよねー。せっかく社長とお知り合いになる良い機会なのに。」
「ふふ、そうだね。」
少しだけ罪悪感。
「でもいいのか。先輩は今幸せ絶頂期ですもんね!」
「あー、まぁ。」
幸せなのか?と聞かれたらNOと答えるだろう。だけどそれも、絶対じゃないのかもしれない。相変わらず借金はあるけど、”副業が変わった”分、身体も気持ちもだいぶ楽になった。
それに何より、誰もいない部屋に帰るよりは……
「楽しいよ。」
「なにそれのろけー。」
「いいなぁ、若いなぁ。」
2人の声に我に返った。少しずつ、私の中で優雨の見方が変わってきている。やっぱり、ほら。不安は的中だ。
ほんの少しだけ感じているこの感情は、膨らむ前に割ってしまえばいい。
そうじゃないときっと、いずれ悲しむことになるから。
私たちの関係はきっと、長くは続かない。
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社長が本社を出発したという電話が入って、所内はまさに厳戒態勢。
社長の巡回は前日に本社から電話で通知される。そして出迎えさせるため、到着時刻もほぼ分かるようにしてくれるようだ。
所長が青い顔をして佇んでいる。他の社員たちも緊張の色を隠せない。
たださえちゃんだけがいつもと変わらず爪を見ながら立っていて。
「先輩!地味で嫌だと思ってたんですけど、磨くだけも結構いいですよね?」
「あ、うん、そうだね。」
嬉しそうに笑っていた。思わず私も、顔が綻んでしまう。
やる時はやる後輩は、場を和ませる力もあって。少し常識がないと思うような行為も多めに見てしまうほど可愛い。