君が好きなんて一生言わない。
…笑わせないでほしい。


俺が麗のことを好きだなんて、そんなの、最初っからそうだ。



「…当たり前だよ、そんなの」



吐き出した声は、情けないくらいに頼りないものだった。


産まれてからどれほどの時間を一緒に過ごしてきたと思ってる。

離れてからも、どれだけ麗のことを考えていたと思う。

麗への気持ちがなかったら、興味もなかった園芸部に入ることだってしなかった。

まして、麗が幸せに暮らせるように、ただそれだけのために自分の人生の全てを捧げるなんて決意をするはずがない。

自ら苦しい道を選んだのも、全ては、麗のことが好きで、大好きで、何より大切な存在だからだ。



「…なら、言えばいいだろ」


ユズが掠れた声で言う。



「そんなに好きなら、お前だって言えばいいだろ?」



正々堂々、真っ向勝負。そんな言葉が好きなユズらしい言葉だと思った。

ユズなら間違いなくそうするだろうし、そうできるのがいちばんいいのだろう。


だけど、現実はそれほど甘くない。



「絶対に言わない。

俺は麗ちゃんが好きなんて一生言わないから」



好きだから相手に好きだと言えるほど、この恋は簡単じゃない。

そんな簡単な恋ばかりなら、世界中の片想いしてる人達はこんなに苦しんだりしない。



「なんで…」



…なんで、なんて問うなよ。

答えは単純明快だ。


世界は誰にでもやさしいわけじゃないってことだよ、ユズ。


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