君が好きなんて一生言わない。
「…だけど、ユズ先輩の気持ちには応えられません。ごめんなさい」


笑顔のままだけど表情を少しだけ曇らせた先輩は何かを言おうとするけど、それより先に私が言った。




「私、言ってきます。


先輩が言ってくれたように、後悔なんてしないように」



すると先輩は驚いたように目を見開いて、すぐに目を細めて笑った。



「…いい顔だな、麗ちゃん」



「麗ちゃんにこんな顔させるやつがいるってだけでクソ悔しいけどなー!」と先輩は言いながら私の頭をがしがし撫でつける。




「…幸せになれ」



「…はい!」



頭をさげると私は走りだした。


後ろは絶対に振り返らない。


ユズ先輩の気持ちには応えられないけど、先輩をこれ以上悲しませるようなことはしたくない。



だから、前を向く。



走って、走って、でも探してるあの人は見つからなくて。

もう夕闇が迫っていて、空は冷たい灰色で覆われ初めている。このままじゃすぐ暗くなって雪も降る。

どこにいるんだろう。

荒れた息を整えながらふと窓の外を見ると、鞄を持った椎先輩が校門を出ようとしているのを見つけた。

それから私は鞄をとりに教室へ戻った。そこでようやく私は探していたひとを見つけた。


「紗由…」


紗由は窓辺で外を眺めていた。薄暗い教室の中で、たった一人で。

私が声をかけると、紗由は振り返って微笑んだ。


「あれ、麗、どうしたの?」


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