君が好きなんて一生言わない。
「…どうして」


先輩は苦しそうな顔をする。

…先輩に苦しそうな表情させてるのも私なんだと思うと、さらに苦しい。

誰も傷付けたくないのに、どうして私は傷つけてしまうんだろう。



「…すみません」

「なんで謝ってるの」


「そんな言葉、ほしくないんだけど」と先輩は言う。

謝りたくて謝っているわけじゃない。

でもそれ以外に、言うことがない。


「ねえ、もうここに来ないつもり?」


先輩の言葉にどきりとした。

図星だったからだ。


黙り込む私に「そんなの嫌だよ」と先輩は言う。


私はもう耐えられなくなって、「嫌なんです」と言った。


「嫌なんですよ、もう誰も傷つけたくないんです!まして紗由を傷つけるなんてそんなことして、私、もう…」


消えてなくなりたい。


そう言おうとしたのだけど、それよりも先に私の言葉にかぶせるようにして椎先輩は言った。


「それ以上、言わないで」


眉間にしわを寄せて苦しそうに先輩は言うと私を抱きしめた。

ぎゅっと力強く抱きしめた。


< 96 / 179 >

この作品をシェア

pagetop