跪いて愛を誓え


「ここティアーモって、入店面接の時に聞かれるんッスよ。『あなたは夢を持っていますか』って。それに答えられた人は大抵受かってます」

「へえ、そうなんだ……」


 私は青葉に勝手にホストにされたから、面接は受けてなくて知らなかったけど。

 もしかして、その質問を考えたのは私のおばあちゃんなのかも。お客様にとって夢の城のティアーモ。だけど、ホストたちにとっても、夢の城にしたかったのかもしれない。

 頑張ってお金を貯めて、夢を叶える為の場所に……


「もしかして、岩さんにもあるんですか?」

「え? 私、ですか? ……はい、恥ずかしながら」


 バーテンの岩さんも、はにかみながら教えてくれた。


「私の夢は、別れてしまった妻と娘、三人でもう一度家族になる事ですかね……」


 みんな、大なり小なり、夢を持っているんだ。

 青葉も……


「スイさんの夢はなんでスか?」


 ふいに初に聞かれたけど、私は答えられなかった。だって『夢』なんて、もう何年も考えた事も無かった。




 ――――私の夢って……何だろう…………




 とりえず、早くお金を貯めて青葉に借金を返す事……そんなの、必要に迫られているだけで全然夢なんかじゃないか。
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