跪いて愛を誓え
10* それぞれの夜
 深夜の駅前は少し寂しい。

 電車ももう終わり、ほとんどのお店が閉店を始める。人もまばらで、チラホラいるのは酔っ払いとタクシー待ちの人たち。お客様の見送りで時々駅前のタクシー乗り場まで来た事もあったから、こんな情景にはすっかり慣れたつもりだったけど。

 一人ではやはり、寂しさが身に染みる。


 お店からずっと走って来たから、はあはあと肩で息をしながら立ち止まる。シャッターの閉まった駅前に、こちらを見ている人影が二つ。

 大きく息を吐き、また吸い込む。

 そして私は、その二つの人影へ向かって足を踏み出した。















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