バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
貴族の館でファーストダンス
 目指すゲストハウスは、ボヌシャンス迎賓館から車で十五分ほどの距離にある。

 私たちは副社長自らがハンドルを握る彼の愛車で、快適に目的地まで移動した。

 こういう役員クラスの人って、運転はすべて専属の運転手に任せるものかと思っていたけど、彼は違うらしい。

『車は自分で運転してこそ、その真価を味わえる物なんだ』というのが、彼の理念なんだそうだ。

「そういえば明日のガーデンパーティーの生演奏を依頼した音楽事務所から、これから会場の下見をしたいって連絡がありましたよね?」

「ああ。俺たちがハウスに着いてしばらくしたら、ちょうど演奏者も着くだろう」

 そんな会話を交わしながら大通りを走る副社長の愛車は、彫りの深い正面顔と、サイドのスタイリッシュなラインの調和がとれたアーバン・スポーツタイプ。

 スモーキーブラウンのレザーシートはセミバケット仕様ですごく安定感があり、漆黒を基調にした内装に、フロントのウッドパネルの模様が小粋に効いている。

 ……だ、そうだ。あいにく私は車にはぜんぜん詳しくないから、ぜんぶ副社長の受け売りだけど。
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