バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 言うまでもなく乗り心地は最高だし、副社長の運転はとても優しいけれど、この車に初めて乗ったときは物珍しさにキョロキョロし過ぎたせいで、途中で吐きそうになって彼を慌てさせた。

 その後しばらくは、“彼の車に乗ると条件反射で吐きたくなる”という厄介なトラウマに悩んだけれど、最近はそんなこともなくなってひと安心。

 そうして無事にゲストハウスに到着した私は、憧れの館を見上げながら感嘆の声を上げた。

「うわあ! やっぱり素敵!」

 旧公爵邸をモチーフにデザインされた二階建ての洋館は、英国貴族屋敷のような堂々とした力強さと、優美さを併せ持った外観だ。

 赤褐色レンガ調の壁は、わざとバラつきのある色合いを用いて、年代と風格を感じさせる仕上がりになっている。

 大きな玄関アーチを抜けて重厚な木製の扉を開けると、そこは広いエントランスホールだ。

 目に映る物は豪華なシャンデリアから小さな花台に至るまで、すべてが“調度品”という名に相応しいアンティーク品。

 私は駆け込むように中に飛び込んで、遠慮なくあちこちを物色した。
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