目は口ほどにものをいう
私は彼が苦手です

雨霧 司 34

私の直属の上司。
長身に整った顔立ち。
仕事も確実な彼は2年前に課長に昇進した。うちの会社では異例の早さ。
仕事に関してはかなり手厳しいので、私はこっそり、鬼課長とよんでいる。
といっても、怒鳴ったり怒ったりするわけではなく、的確に指示を出してくる。
理不尽なことも、無茶ぶりもなく、上司としては尊敬できるし、
優しく、人当たりの良い彼は、女性社員にも男性社員にも人気がある。

特に女性社員からは憧れの的。何人も告白しては、断られ続けているらしい。
一時期、ゲイ疑惑まで出ていたけれど、誰かが、課長と女の人が並んで歩いているのを見たらしくその噂は消えた。

入社当時、彼は私の指導係だった。
私にできることをうまく割り振り、次に繋げていけるような指導をしてくれた。
ミスをしても決して怒ったりせず、解決策を一緒に考えてくれる。
おかげで、早い段階で一人で業務をこなせるようになった。


彼が、指導係であることで、ねたまれたりうらやましがられることもあったけれど。
当時から、私は彼が苦手だった。

どんなに笑っていても、目が笑っていないのだ。
ミスに対し、厳しく注意するときも、目はいつもと変わらない。

”目は口ほどにものをいう”

はずなのに。

彼の目は、感情を表さない。

ほんとに最初の頃は、こんなことはなかった気がするけれど…
昔すぎて思い出せない。

彼が本心で何を考えているのかわからなくて、怖い。
だから、ミスをしないように、怒らせることがないように、入社当時も、今も気を張り詰めて過ごしている。

ただ、これは、

私に対してだけらしい。
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