颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「しかし。ほんと安いね、キミ」
「何がですか?」
「服買ってもらってバーに連れてこられて、それだけでドキドキとか。こんな子どもだましのキスで瞳を潤ませて。ホント、安い」
「ひどい。颯悟さんのキスって何なんですか?」
「サービスみたいなもの? デートしてないっていうから。ほんとに彼氏いないんだね」
「いませんけどっ!」
確かに、ごちそうさま、でしたけど! まだ、つないだままでいる手も!
祐理恵さんが消えたんだから、離してもいいものを。
自分から離せないのも悔しい。
まさか、桐生颯悟も疑似恋愛したくて私と手をつないでる、とか?
いやいやありえない。
「そういう颯悟さんもデートしてないってことですよね?」
「キミと違ってデートはそこそこしてるけどね。本当のデートからは遠ざかってる」
本当のデート。つまりは好きな人と一緒にいる、という意味あい。つまりは早百合さんとのデートでなければ桐生颯悟にとってデートじゃないってことで。
「そんなに片想い歴、長いんですか?」
「まあ、ざっと2年? さっさと諦めればいいのにって自分でも思う」
「そうですか。ちなみに早百合さんとはどこで?」
「仕事で失敗してやけ酒して、酔いざましに寄ったのがはむはむカフェ。そのままオレ、カフェで寝込んじゃって、早百合さんが介抱してくれたんだ。大丈夫?って優しく声かけられて。それだけ」