颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
バタンとドアを閉じ、桐生颯悟は私に向き直った。
にこやかな表情が途端に呆れ顔に変わる。


「まあ上出来かな」
「そ、そうですか」
「キミにしては。役員専用エレベーターに乗るようなバカな子にしてはね」
「そんな、バカって」
「人事部にクレーム入れないと。こんな子採用した上に本社栄転なんておかしいでしょ。名もない地方短大の首席卒業とか? あ、それとも……」


桐生颯悟は一歩踏み出し、私の顔をじっと見つめた。
甘いマスクに間近で見つめられ……焦る。

すると彼は、ふっ、と息をもらし、顔を横にそむけた。


「有り得ないな……役員に身体で取り入ったとか。こんなキミに引っかかるような役員もいないし。役員でなくとも男は全員……」


な、な、なーっ!!!


「ねえ、どうやって入社したの? 誰かのコネ? コネで入るくらいならもっとうまく立ち回れるよね。キミ、不器用そうだし。コネじゃなければお金? それもなさそうだね、すっごく庶民的だし」


クスクスクス、と肩を振るわせて意地悪く笑う桐生颯悟。


「し、失礼じゃないですか? 初対面でそこまで言うのは」
「だって本当でしょ? 財力ナシ機転ナシ、色気ゼロ」
「そ、それは……」


確かに正解だけど。


「そ、そういう、アナタは」
「アナタじゃなくて颯悟さん」
「そういう颯悟さんは……って、なに、私乗せられてるのっ」
「ねえ、キミ」


ズン。桐生颯悟はまた私の顔をのぞき込んだ。あと数センチで鼻と鼻がくっつきそうだ。私は後ずさる。

ドン。桐生颯悟の腕が再び私の頬を掠めた。人生2回目の壁ドン。


「よく見ると二重なんだね。かわいいね。この唇もふっくらしててそそるし? ん?」

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