颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
はい? 結婚?
いま、結婚って言った?????
「け、けっ……☆§●※▽■〇×?!」
痛いっ! またつねられた。
非常階段では、恋人、だったはず。
右隣に立つ桐生颯悟を見上げた。
にっこりと明るく微笑み、やや首を傾げる仕草はいたずらっ子のようでかわいい。父親であるらしい社長にかわいくアピール、みたいな?
このひと、猫かぶり?
二重人格?
腹黒?
社長もゆったりと微笑んで、おいおい、と腹に響くテノールの声を響かせた。
「付き合って半年なんだろう? 性急じゃないか颯悟」
「時間は関係ないって父さんも言ってたじゃないですか、母さんに一目惚れして一週間でプロポーズしたって」
「そうだがなあ。でも祐理恵さんとはもう、決まっていることだし。颯悟もいいと了承しただろう?」
「いえ、前向きに考えますとは言ったけど。ね、祐理恵さん?」
にこにこにこ。
そんなことを言われて許嫁がどんな顔をしてるか気になり、横目を使って祐理恵さんとやらと盗み見た。
彼女もにこやかに笑っている。でも私は背中に冷たいものを感じた。
だって見える、彼女の背後にオーラが。負のオーラが。
……うわ、怖い。口元は笑ってるのに目が笑ってない!
「ふふ。結構なお話です、っておっしゃったじゃないですか。あれは承諾の意味ですよ、颯悟さん」
「そんなこと言ったかな? 覚えてないな。猪瀬物産ホールディングスのご令嬢ともあるお方が僕の発言をねつ造されるなんて。ご令嬢って怖いですね!」
桐生颯悟=にこにこにこ。
どこまで猫かぶりなの、桐生颯悟。
祐理恵さんの眉がひくひくしている。意外と導火線短いひと?
「じゃあ、そういうことで。僕はこのみのりさんと結婚するから。父さんあとはよろしくね。みのりさんからもお願いして」
「ふふふふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします」
もちろん、桐生颯悟に脇腹をつままれたままで。