きっと、君だけ。



「………………ない」



……え?



今、彼が何かを言った気がする。とても小さな声で。


消え入りそうな声で、大切な何かを。



すっと顔を上げると、真っ直ぐな瞳と視線が重なった。



なぜだろう。


ほんの一瞬、笑ってるはずの彼が、泣きそうな顔をしているように見えた。



胸がドクンと音をたてた……気がした。




「藤咲さんって、超可愛いよね」



「は!? 」



「顔真っ赤。……どうしよ」



クスクスと笑いながら、握った私の手の甲を、そのまま自分の頬にすり寄せたみせた。


さっきの胸の音とは違う、ドキリと心臓が跳ねる。



「俺、藤咲さんのこと、好きになっちゃった」



…………は?



前言撤回。


油断していた私は、とてつもなく後悔することになる。



この世に偶然なんてないって言葉を、何かの本で読んだことがあるけれど。


こんなにも心をかき乱してくる人に出会ったのは、本当に必然なのだろうか──……。


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