きっと、君だけ。
「わざと教科書忘れて机ひっつけて、こうやって藤咲さんに見せてもらったりしちゃうし」
「あの、尾崎くん離れてくれるかな? あと教科書をわざと忘れるのはただの迷惑だから」
「そう言いつつも、優しい藤咲さんはなんだかんだ見せてくれるの知ってるし」
「……っ」
優しい……とか。
言われ慣れてなくて、戸惑ってしまう。
「まあでもそれは、少なくとも今年1年間は実現不可能だから……」
チラリと私を見つめ、ニッと微笑む尾崎くんの表情は楽しげだ。
「だから、放課後のこの時間は、藤咲さんの隣は俺のね?」
甘ったるい声に、ドキリと心臓が高鳴る。
それを認めたくなくて、誤魔化したくて、私はプイッとそっぽを向いた。
「別に、私の隣っていうか、そこは誰が座ってもいいところだし、私には拒否権ないし……!」
「やだ」
「え」
「俺以外のやつは拒否って」
ムスッと駄々をこねる子供みたいな言い草をする尾崎くん。
キュンッてしてしまうのは、母性本能なのだろうか。
容姿がいいだけに、彼のこんな姿を見て、いわゆるギャップというやつに、女の子たちは騙されるんだろうなって思った。
「……だ、誰も来ないから、どうせそこ座るの尾崎くん以外いないし!」
そう言うと、尾崎くんは嬉しそうにふっと笑った。