ホワイトデーにおくるのは。
いよいよ甘奈とチョコ作りの決行日になった。

放課後になると、珍しく隣の教室から渉がやって来た。


「よお。夏川さんとはどうなの?」

「今日一緒にチョコ作ることになった」


それを聞いていた直也が驚いて「うぇ!?」と変な声を出した。

二人ともはとが豆鉄砲を喰らったような顔をしている。


「お前やるじゃん! 夏川ちゃんとうまくやってんじゃん」


直也は喜び、はしゃぎながら、俺の肩甲骨の辺りを平手打ちしてきた。


「いやー、明日がホワイトデーだから、『なにもなくて、どうしよう』なんて言うと思っていたのに、大したもんだな」


渉も一緒になって、腰の辺りをバシバシ叩く。

打楽器のようにもて遊ばれているが、善意を感じるから悪い気はしない。


「ほれ、俺たちにかまってないでさっさと夏川ちゃんのとこに行ってこい」

「そうだ、夏川さん待たせんなよ」

いやいやかまってきたのはそっちだよ、と思いながらも、気分は上昇していた。

他人のことなのに、ここまで喜んでくれるとは、まったくいいやつらだな。


「じゃあな、直也、渉」


妙に浮わついた心地をしながら、甘奈のところに向かう。

隣の教室までは少しの距離なのに、自然と気持ちが足をかけあしにさせる。

びっくりするほど体が軽い。

教室に入って、甘奈と合流した。


「おー、やる気まんまんだね」

「まあな」

「んじゃ、行こっか」


帰り道とは程遠い、だけど恋人に近づくための、盛大な寄り道先に向かう。

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