ホワイトデーにおくるのは。
甘奈の家には初めて入ることになる。

小学生のとき、同性の友達の家に遊びに行くことはあったけど、異性の家なんて初めてだから、緊張する。


「ただいま。さあ、入って」

「お邪魔します」


入ってみると、普通の家だ。

……いや当たり前か。

女の子の家だからって、特別造りが違うわけないか。

いかん、テンパってしまって、頭が回らん。


「なにおどおどしてんの?」

「いや、女の子の家って初めてだからさ」

「そんなこと気にしてたの? 親も今いないし、堂々としてなさい」


命令形の口調と共に、背中をポンッと叩かれた。


「なんでそんなに優しく叩いたんだ?」


この前は強く叩いていたので、俺は不思議に思った。


「卵割れちゃうでしょ?」


納得できたような、できないような。

俺は卵よりもぞんざいに扱っていいのか。

俺の心が割れるぞ。

しかし、卵に負けるとは情けないな。

そんな大変貴重な価値のある卵が入ったバッグを下ろして、甘奈は冷蔵庫に卵と生クリーム、そして牛乳をてきぱきと入れていった。


「よし、今日はこれでおしまいね」

「あ、うん」


あっけないな。

とはいえ、買い物でこんなに細かく買うのは、初めだな。

母さんもこのくらいしてたんだろうか。


「じゃあ、気をつけて帰るのよ」

「え? もう?」

「女の子の家は入場料高いんだぞ」

「そうなのか」


課金しないとだめなのか。

スマホアプリのソーシャルゲームみたいだな。


「なーんて、嘘よ。春休みの宿題、もう出ている教科もあるから、早く片付けて、休みはぱーっと遊びたいの」

「あぁ、なるほど」


そうだよな。まとまった時間があれば、ゆっくりゲームできるもんな。


「ほら、帰った帰った。翔もやるのよ、宿題」

「おう」


しまったなぁ。どうせなら宿題持ってくればよかった。

そうすれば一緒にできたのに。

まぁ、今日のクエストはクリアしたから、いいか。

次は十三日か、楽しみだな。

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