ホワイトデーにおくるのは。
甘奈はシンクの引き出しから大きいボール、それより少し小さいボール、そして泡立て器を取り出して、それぞれの器具にアルコールをかけた。


「翔の役割はこれね」


そう言って、取り出したのは生クリームの紙パック。


「ほう。メレンゲというやつだな」

「メレンゲと生クリームは違うの。これは生クリーム。メレンゲは卵白が原料で、生クリームは牛乳の乳脂肪分が原料なの」


なにを言っているのか、さっぱりわからん。

その辺りの分野の知識が皆無の俺には、どちらも同じなんじゃないかと思ってしまう。

だが、そんなことを口に出すのは、さすがに野暮だろう。

そんなことを知ってか知らずか、甘奈は大きいボールに氷と水を入れていく。

その上にもう一つのボールを乗せ、氷水の上に浮かせた。

少ししか水を張っていないから、それほど浮いているわけではない。


「じゃあ、生クリーム作っといてね」


そう言って、浮いているボールを抑えて、まださらさらした液状の生クリームを入れて、二つのボールごと泡立て器と一緒に渡してきた。

こうしてみると、ただの牛乳みたいだな。

ケーキとかでよく見かける生クリームに、本当になるんだろうか。


「混ぜるだけだから。とはいっても、最初は空気が入るようにやってほしいけどね」

「混ぜればいいんだな。下の氷水はなにか意味があるのか?」

「冷やした方ができやすいのよ」

「ハンドミキサーは?」

「ない」


ふーん、まぁ混ぜるだけならお安い御用か。

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