ホワイトデーにおくるのは。
安直な考えにひたっていたが、しばらくしてから、自分の考えの愚かさを感じた。

十五分くらい混ぜているのに、全然手応えがない。

同じ動作のせいか腕がしんどい。

なんなんだこれは……。


「甘奈、お前、ほんとにこれやったの?」

「ん? あぁ、やったよ」


ガスコンロの横で別の作業をしている甘奈は俺に一瞥(いちべつ)してから、すぐに自分の作業に視線を戻した。

甘奈の前に散りばめられている板チョコから察するに、板チョコを割っているのかな。

この音なら聞いたことがあるし、たぶんそうだ。


「さっきから延々と、カッカッカッカッカッ、と鳴り響いているだけなんだが」

「そういうもん、そういうもん」


俺の悲痛な叫びは軽く流されてしまう。

なんか悔しい。

しかし、乗りかかった船だ。

一度やり始めたからには、やってやる。

気持ちのギアを入れ替えて、気合いを込めて混ぜる。

混ぜれば混ぜるほど、甘奈が同じことをやったことへの驚愕とたくましさを感じる。

料理も力仕事なのだろうか。

女の子は大変だな。

いや、料理を女の子だけがするものだなんて思っちゃだめか。

現に今やっているわけだし。

必死になって、なにかに食らいつくように、混ぜていると、とろみが出てきた。

念願の手応え。

いつの間にか完成することより、この手応えを追い求めていた。それほどまでにきつい。

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