ホワイトデーにおくるのは。
「それに翔、甘いのが好きだって言うわりに甘ったるいのは嫌だとか、アイスのほうが好きだとか、わがまま言うから」

「そんなこと言ったか?」

「言った。メールで言った」


それは、確かコーヒーの話じゃなかったか。

それに、『言った』って、『わがまま』ってなんなんだ。

でも、そんなことより、そこまで俺のことを考えてくれたことが嬉しい。


「翔ったら、全然デートにも誘ってくれないし」

「え? いや、そんなにするものなのか」

「たまにでいいわよ」


そういうものなのか。

なに言っても、予想できない答えが返ってくる。

もはやなにを言い分にしていいかわからん。


「あんまり頻繁だと私も困るし」

「そうか」

「春休みになったら、一緒に散歩でもしよう。宿題ちゃんとしておきなさいよ」

「うん」

「いいところがあるの。歩いて行けて、森林浴が気持ちいい公園があるの」


ずっと自身の中に秘めていたのだろうか。

ありあまった歓喜を分かち合いたいかのように、笑顔で話し続ける甘奈。

こんなにも一緒になってくれることを厭わないなんて嬉しい。

難易度の高いゲームをクリアしたことよりも、ずっと。


時間と想像。胃袋をつかむ。


直也、渉、川野さん、そして父さんに聞いて、母さんの言っていたことにたどり着けて、本当によかった。


ひそかに届かない、ありがとう、を心の中で唱えた。


「ねぇ、翔」

「どうした、甘奈」

「好き」

「俺も好きだ」


甘奈に対する自分の気持ちをちゃんと言うのは初めてだ。

無機物のはずのチョコに、背中を押されたようだった。


今まで全然実感がなかったホワイトデー。


今はこの上なく記念日にしたい。


















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