浮気の定理-Answer-
木下の場合①



「店長、ちょっと相談したいことがあるんですけど……」



そう声をかけてきたのは、ホールを担当してるアルバイトの市毛紗英だった。


明るくて可愛らしい容姿の元気な女の子という印象の紗英は、シフト面でもよく助けてくれる大事なスタッフでもある。


笑顔を絶やさず、接客も申し分ないことから、客からのウケもいい。


年齢的にはまだ22歳という若さのわりにしっかりしたところもあり、改善すべき点なども、物怖じせずきちんと店長である俺に報告してくれる。


だからこのときも、そういった類いの相談だと思ってた。


6歳も年下のしかもアルバイトの子に、好意を寄せられるなんて思ってもみなかったから……


店も閉店し、片付けもあらかた終わった時間。


他のスタッフはみんな帰って、一人で売り上げの計算をしていたその時、彼女に声をかけられたのだ。


残っているスタッフはいないと思っていた俺は驚いて振り返ったのを覚えてる。




「なんだ、紗英ちゃんか
みんな帰ったと思ってたからビックリしたよ」



ハハッと笑いながらそう言えば、紗英は少し思い詰めた様子でこちらを見た。
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