浮気の定理-Answer-
「ご飯よー!」



キッチンから俺を呼ぶありさの声が聞こえる。


俺はリョウになんの映画を観たの?という返信だけしてスマホを閉じた。


食卓につくと、ありさが苛立ってるのがわかった。


短時間で作った炒めものやサラダ、味噌汁なとがテーブルには並んでる。


娘たちもすでに席についており、俺が来るのを待っていたみたいだ。



「ごめん、ごめん」



隣に座る上の娘に謝りながら、急いで席に座る。


遊んできたとはいえ、帰ってすぐに食事の支度をしたせいで、ありさの態度は疲れからの苛立ちだと俺は思っていた。


楽しいはずの食事は、ありさの機嫌が悪いせいでお通夜のようにシンとしてる。


カチャカチャと食器の擦れる音だけが部屋に響いていた。



「おい、なに不貞腐れてんだよ」



たまりかねてそうたしなめると、ありさは強張った表情のまま、別に……と言葉少なに返してくる。


娘たちはそんな雰囲気に何かを感じとったのか、次々にごちそうさまと言って席を立った。


リビングでまたテレビを見始めた娘たちを見届けてから、俺はありさに向き直る。



「なんなんだよ、あいつらがいる前でそんな態度すんじゃねぇよ」



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