浮気の定理-Answer-
ありさは何か言いたげな顔で俺の顔をじっと見ていたけれど、今はまずいと思ったのか、ごめんなさいと小さく呟いた。



「わかったんならいいけど……」



俺もそれ以上は追及することなく、目の前の肉や野菜を口の中に放り込む。


そのうちありさの方がごちそうさまと席を立ち、俺は一人ぼっちでテーブルにとり残された。


なんだか惨めな気分になって急いで食事を終わらせると、食器を持ってシンクへと運ぶ。


もう洗い始めていたありさの背後から、自分の食器をお湯を張った桶にそっと滑らせた。


ビクッとありさの体が驚いたように動いて、後ろを振り返る。


その顔が、自分を拒否してるような気がして、俺は面白くなかった。



「なんだよ、食器を片付けただけだろ?」



いつもはあまりしないことだけど、たまにやったときくらいは誉めてほしいもんだ。



「あ……あぁ、ごめん……ありがと」



ばつの悪そうな顔で、そう言うとクルリとまた前を向いて食器を洗い始める。


やっぱり、今日のありさはなんかおかしい。


ランチをしたって、誰となんだろう?


今まであまりそういうことを心配したことなんかなかったのに、なぜか胸騒ぎがした。

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