浮気の定理-Answer-
また別の日の夜。


今度は中年男性が一人で現れた。


イライラした様子で、強い酒をあおってる。


――最近、あの彼女は一緒じゃないんだな?


表情には出さずに、そんなことを思う。


もしかしたら振られたのかもしれない。


それがイライラの原因だと考えれば、合点がいく。


持っていた携帯を乱暴にしまった男性は、残っていた酒を一気に流し込んで、席を立った。


それから会計を済ませ、溜め息をつきながら、店を出ていった。


待ち人来たらずといったところだろうか?


不倫なんていいことないに決まってる。


彼を待ちながら、いつも寂しそうに飲んでいた彼女の顔が浮かんだ。


――別れて正解だよ……


今度は、彼女が寂しくないような恋をしてほしい。


ただの客とバーテンダーという関係なだけなのに、なんとなくそう思った。
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