浮気の定理-Answer-
こいつが必ず金を払うっていう確証がない以上、引き受けるつもりはなかった。


いくらいい思いが出来るって言ったって、内容は犯罪に近い。


しばらく黙って考え込んでいた男は、仕方ないといった様子で、胸ポケットからメモ用紙を取り出し、何かを書き始めた。


書き終えるとそれを、俺の前にスッと滑らせる。


なんだろう?とそれを読んでみると、誓約書のようなものらしい。


俺に30万を払うと、自分の名前入りで書いてある。


「これで安心しましたか?

もし、払われなければ、それを弁護士なりに持っていけば、効力があると思いますよ?」


確かに、印章などはないが、筆跡で証明されるだろう。


男の言葉に嘘はない。


「わかった、じゃあさっそく今度の同期会で、仕掛けてみますよ

報告はどうしたらいいですか?」


「このアドレスにメールしてください

あとは振り込んだ時点で、こちらからメールしますから

確認が済んだら、そのメールは消去してください
繋がりがバレると、計画もパアなので」


どこまで用意周到なんだと半ば呆れながらも、俺はわかったと頷いた。


ふいに視線を感じて横を向くと、バーテンダーが何事もなかったかのように視線を外す。


――聞かれていただろうか?


少しだけ不安を感じながら、それでもわざとバーテンダーを呼びつけると、同じものを二つ、にこやかに注文した。
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