浮気の定理－Answer－
飯島の場合②
「清水さん、飲んでる？」


そう声をかけたのは、歓迎会を兼ねた店の定例会の時だった。


みんなが騒ぐ中で、一人だけポツンと端っこの方で飲んでる彼女に目がいったのだ。


初めて参加するから緊張してるのもあったのかもしれない。


他のパートさん達は、もうすっかり出来上がっていて、僕は思いきり絡まれていたから、余計に彼女が気になったんだと思う。


トイレに立つのを口実に、戻ってきたタイミングで、彼女に近づいた。


そこでさっきの言葉をかけたのだ。


彼女は驚いたように顔を上げて、僕の顔を見るなり微笑んだ。


「あ……副店長さん」


「飯島でいいですよ？」


「そう……ですか？

じゃあ、飯島さん

こっちに来ちゃって大丈夫なんですか？」


そう言いつつチラリと向けた視線の先には、菊地さんを筆頭に酔っぱらっているパートさん達が騒いでる。


「またあそこに行けって言ってます？

勘弁してください、かくまってください」


そんな冗談を言いながら、ハハッと笑うと、彼女も察したように声をあげて笑う。
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