優しい雨 ~一年後の再会~
 そして、二人で演劇部のなかった高校を受験し、創部して現在に至っている。
「俺は、智博を思いっきり演じさせてやりたい」
 柚莉花を前にして力強く言い切る。
 自分で演じるよりも、演出の方に興味を持ちはじめた頃にと智博と出逢った。
 芽生え育ち始めた夢を後押ししてくれる存在になった、お互いに。
 そして今も。
「遠山先輩。智博を支えてあげてください。あいつ、演技はうまいけど嘘はつけない奴ですから」
「私が?」
「えぇ、貴女がいいらしいですよ」
蒼の話を聞きながら柚莉花一年前の智博を思い出していた。
 電話で“アオイ”と話す口調に特別なものを感じたのを覚えている。
 だから、特別な女の子…彼女かなと思ってしまったのだ。
 親と離れて独り立ちしようとしていた少年を支えていた、大きな信頼の証。
 妙に心が軽くなったのに気付いた。
 あの日、心の奥底に沈めた思いが再び芽を出していることも。
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