素直になれない

「帰ります。……ご迷惑おかけしてすみませんでした」


日向先生に向かって頭を少しだけ下げて、落ちていた自分のバックを拾って辺りを見回した。


真柴と飲んでいた居酒屋から少し離れた場所だと分かって、自分の家に向かって歩き始めた。


そう言えば真柴はどうしたんだろう?どうして日向先生におぶわれていたんだろう。


スマホを取り出して真柴へメールする。


刹那、後ろから名前を呼ばれて足を止めた。


「これ、持って帰れ」


言うなり、日向先生は何かを投げてよこしてきた。


ちょっ、いきなり投げないでよ!


宙で弧を描いたその物体をやっとの思いで受け取った。


手の中に落ちてきたそれは、昼間に見せられたスイーツの入った袋だった。


「え、?なんでこれ……」


「お前が好きだと思ったから、お前の為に恵都に頼んだ。俺が持ってても仕方ないだろ」


捨て台詞の様に言い放って踵を返し、私とは逆の道を歩いていく日向先生。


「私が好きだと思ったから……って、わざわざ?」



分からない。


日向先生が何を考えているのか、本当にわからないよ。



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