素直になれない
見当はずれだから。


……そうでないと困る。


ぽつり、と本音が溢れた。


それが心の奥に追いやったはずの恋心を溜めていたグラスに落ちて、こぼれる一雫手前でゆらゆらと揺れている。


こぼれてしまえばもう堪えることもできずに堰を切ってあふれ出す。


また、あの痛みと苦しみを味わうことを知ってなお止められなくなる。


そんなこと……出来ない。


怖いんだ。


本当に怖い。





「あんたはどうなの?」


「え、」


真柴がランチプレートのオムレツを口に運びながら、ぽつ、と落とす。


「私から見れば、あんたも未練タラタラだよ」


「なにを……っ、」


「確かに砂から聞いた話の日向先生は酷いやつだけど、私はあんたからの話しか知らないし、本当のところはどうだったのか確かめてもいないけど、少なくとも砂は日向先生の事を嫌いになって忘れたいわけじゃないよね?すごく好きだったから、裏切られたのが辛くて必死で嫌いになろうとした。でも再会して再び芽生えた恋心に動揺してる」


「真柴……?」


「ま、動揺させてる日向先生の本心が分からないけど、どーも砂に構いたくて仕方ないって感じるんだよね。厳しい態度も砂だけに向けてるってところも、甘えてるって感じるし」






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