素直になれない
「ま、無理はすんな。点滴出しとくから」


「ありがと、助かるわ」


その間私は2人の間に漂う空気に踏み込むこともできず、かといってその場を離れることもできず、居心地の悪さに目を伏せていた。


「じゃあリン……っ、砂川さん点滴指示出しておくから頼む」


「……はい」


それまでどれだけ頼んでも苗字で呼んでくれなかった日向先生が私にそう言って、自分は電子カルテに向き直った。


なんだろ、このモヤモヤ感。


凄く気分悪い。


処置室から出て行った日向先生には見向きもせず指示の点滴の準備を始めた。


「本庄(ほんじょう)茜さんでよろしいですね?今から点滴させていただきます」


「……お願いします」


支持器に点滴バックを掛けて、管の中に液体を通した。駆血帯で彼女の細く白い腕を圧迫して針を刺す準備をする。


実際に針を立てて固定するまでの間、何故か彼女からの視線を痛いくらいに感じていた。


女医さんだから、私の点滴技術に不安なところでもあるのかと緊張してしまった。


無事に終わってホッと息をつく。

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