素直になれない
「昼間、茜から何か聞いたんだろ……?」
どうしてそんなに不安そうな顔をするんだろう。私が誰彼構わず彼女との会話を言いふらすとでも思っているんだろうか?
そんな口の軽い女だと思われていたなんて心外だ。
「別に誰にも言いふらしたりしませんよ。日向先生が意外に一途でヘタレな男だなんて。そんな男だって先生を好きな人達に知られたらモテなくなりますもんね」
「は?誰がヘタレだ」
「本庄さんがそう言ってました。いいんじゃないですか?一途なのは悪いことじゃないし、付き合ってる彼女を大切にしてることは良いことだし。……ヘタレな理由は知りませんけど」
そう言えば、なんで彼女に一途な男がヘタレなんだろ?
「あいつがヘタレだっていったのは……」
口を開いた日向先生の様子が少しおかしかった。
何かを言い淀んでいるような。
けれど次の瞬間には、何かを振り払ったように真剣な表情になっていた。