詩集 風の見たもの
【吹きだまり】

どんな街にも、大抵は少し淀んだ場所がある。
そこに集まる人々は心に闇を持っていて、
明るい場所を避けながら何くれとなく足掻いてる。

どんなに狭い隙間にも入って行ける風でさえ、
そういう場所は避けてゆく。たまに吹き込むはぐれ風、
沈んだ空気をかきまわし、暫く遊んでみたものの、
誰も反応しないので、ほどなく厭きて去ってゆく。

けれど時には目を見張る、キラリと光る奴もいる。
そーんな奴を見つけると何故だか嬉しい風だけど、
何かをしてやる訳じゃなく黙って様子を見てるだけ。

中には風を感じ取り、縁起をかつぐ奴もいて、
節目が来ると風を待ち、風と一緒に動き出す。
風は全く無頓着。それでも何故かツキを得て、
確かに万事うまくいき、当の本人得意顔。

飛び出す奴はごくわずか。風を味方につけたから。
多くはそこでくすぶってあえなく一生終わるだけ。
それでも夢を垣間見て行動起こす奴は、ただ
風が脈打つ躍動に突き動かされ、進んでる。

こうなりゃ誰も止められぬ。行くだけ行って止まるのみ。
ある種風にも似ていると、風は感じているだろう。
まるで後押しする様に、寄り添い波瀾を引き寄せる。
風雲急を告げたとて、構わず前へと進みゆく。

後に残った大多数。淀みの中で蠢いて、
一歩踏み出す勇気無く、それでいいやと本心を
塗り替え何の甲斐もない、時を過ごして朽ち果てる。
風はますます遠ざかる。変わらないのは吹きだまり。
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