偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「ううん、いいのよ。仕方がないもんね」
口ではそう言いながらも、麻琴は残念でならないようだった。
「あら……あなた、かわいいピンキーリングしてるわねぇ」
稍の右手小指を見て、麻琴が覗き込む。
「真珠ってあなたの誕生石?」
「そうです。魔除けになるので」
婚約者だって追っ払ってしまった。
もしかしたら「厄祓い」だったかもしれないが。
「そうなのね。あたしもつけてみようかなぁ。
オパールなのよねぇ……どこで買ったの?」
そういえば、沙知もつけたいと言っていて、同じようなことを訊かれたのを思い出した。
「帰省したときの地元のアウトレットです」
稍がそう答えると、麻琴がにっこり微笑んだ。
「それは、お得なお買い物ね」
……麻琴さん、すっごくいい人だ。
もし、この会社でずっと働けるのなら、もっと心を開けたのになぁ。