偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
もう一人のメンバーもやってきた。
生成りのコットンニットにベージュのチノパン姿のその人は、山口と同じくさわやかイケメン系ではあるが、年齢が少し上で、さらに左手薬指にプラチナのシンプルな指輪があるため、落ち着いて見える。
「サブリーダーの石井 大貴です。このチームではできあがった商品の販促を担当してるんだ。どうぞ、よろしく」
「石井くんはこう見えて社長の従弟でね、親会社の創業者一族よ」
「……どう『見えて』だよ」
石井が麻琴をじろりと睨む。二人は同期入社の同い年だった。
「あ、でもね、このチームでは唯一の妻子持ちなのよ。入社一年目で、大学時代からつき合ってた一つ歳上のお金持ちのお嬢さまと結婚したの。
十歳になる男の子がいるパパよ」
いきなり「個人情報」がタダ漏れだ。
石井が、少し癖のあるダークブラウンの髪をくしゃっと掻き上げて「麻琴ちゃん、おしゃべりだな」と呆れたように、はぁっ、とため息をつく。
「八木 梢です。よろしくお願いします」
自己紹介も三人目になると、簡素になってきた。妻子持ちだし。