偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「なっ…なに言うてんのよっ。勘違いしやんといてっ! 『偽装結婚』やろっ⁉︎節度は守ってっ!
あたしは好きな人としかできひんからっ!
『セフレ』とかそういう関係は絶対に無理やしっ!」

稍はのしかかろうとする智史を、ぐいっ、と押し退けて、ソファから「脱出」した。

「さぁっ、この部屋を片付けるえっ!」

稍は手首に通していた髪ゴムを外し、セミロングの髪を手早くお団子(シニオン)に結んだ。

「おっ、やっとここを片付ける気になったか?」

智史の声が弾んだ。

「ギリギリ四月末までに手続きできるから、今のマンションは五月末までにしてもらうことにする。そしたら、六月からここがあたしの家になるやんか……ゴミ屋敷なんかに住みとうないし」

カウチソファの上に積まれた衣類を見ながら、稍は言った。

「おれはこのGWのうちにこの家をキレイにすると同時に、おまえの引っ越しも完了させる予定やねんけどな。せやないと、連休開けは忙しなるから、六月になる頃には元の木阿弥や。
……そのために、一週間分の着替えを持って来させたんやないか。引っ越しの荷物を取りに行く以外は、天沼には帰らさへんで」

……はぁ?

早速クリーニングに出すのと、家で洗濯できるものとに分けていた、稍の手が止まりかける。

「それに、連休全部も使われへんぞ。後半は一泊二日で神戸に帰るからな。
……そのために、キャリーバッグを持って来させたんやないか」

「はあぁっ⁉︎」

稍の手が完全に止まった。

「なんで、神戸やのん⁉︎」

思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。
智史の母方の実家は、神戸ではない。

「おれらの『実家』に『結婚』の挨拶に行く」

なのに、智史はきっぱりと言い切った。

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