偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
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午後は片付ける手を休めて、ダイバーシティの品質の良さで定評のある国内の家具メーカーのショールームへ出かけた。
こういうときにお台場は便利だ。

そして、玄関口にある通称「物置部屋」の一面にずらりと並ぶように、同じシリーズのワードローブ、チェストそして本棚を選ぶ。
圧迫感のないように、壁紙と同じアイボリーにして、店舗に備え付けてあるタブレットでシュミレーションすると、まるで初めから造り付けの収納スペースみたいになった。

稍は思わず某リフォーム番組で「After」の際にかかる音楽を、♪チャララ〜チャラララッラ〜 と口ずさんでBGMにした。
智史からは「……おまえ、音痴か? 何の曲か、さっぱりわからん」と呆れられたが。

だが、そのあと気を取り直して、隣で長身を屈めてタブレットを覗き込む智史は満足げだった。

「これだけの大容量の収納スペースができたら、あのダンボールの中の本も嫁ぎ先が決まったな」

稍は「音痴」の件ではタブレットを「犯行」の凶器にしようと思ったが、そのあとの智史の様子を見て、なんとか回避した。


店員を呼び止めると「新婚さんですか?」と、稍にとっては「余計な」ことを訊かれる。

智史はTシャツにジョガーパンツ、稍はパーカーにスキニーパンツというまったくの「普段着」だったため、気負った「デート」の時期は過ぎた入籍後だと思われたのだろう。
実際にはデートすらしたこともないのだが。

智史が「近々、入籍します」と、これまた「余計な」ことを答える。
「それはおめでとうございます!」と、店員の顔がぱあぁっと明るくなる。

店員が智史のカードを持って会計をしに行っている間、稍は横目でぎろり、と睨んだ。

「なんで、あんなこと言うのん?」

「アホか、『偽装結婚』の予行演習やないか。
おまえ、練習もせんと親の前でいきなり演技できるのか?」

智史が、心底呆れた声で言った。

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