偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
マンションに戻ると、今朝、世話になったコンシェルジュがいたので、稍は丁重に礼を述べた。
智史も当然、礼を言ってくれるものだと思っていたら……いきなり、手をつないできた。
しかも、がっつり「恋人つなぎ」だ。
「近々、入籍しますので、彼女の指紋認証の手配をお願いします」
ここでも「予行演習」を始めたのだ。
「青山さま、おめでとうございます。それでは、これからは『青山さま』もしくは『奥さま』とお呼びさせていただきますね」
コンシェルジュはにっこりと微笑んだ。
「指紋認証の件も承りました。こちらがその申し込み書類でございます。生憎、GWでお手続きは連休明けになりますが、手配の方はしておきますので」
稍は「おめでとうございます」と笑顔で祝福してくれる度に「実は、真っ赤っかなウソっぱちなんですよ…」と思い、なんだか居たたまれなくなってきた。
だが、隣では智史が「ありがとう。これからも、妻ともどもよろしく」と平然とウソをつきとおしている。
稍は智史の「人間性」を改めて疑った。