偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……『麻生』やなくて……『八木』なんや」

智史が稍とはつないでいない片方の手で、器用に折りたたんでいく婚姻届を見て、登茂子がつぶやいた。

「みどり……籍抜いたんや……」

すると、稍が重い口を開いた。

「父に好きな人ができて、再婚したいということで……去年、正式に離婚しました。あたしと栞は母の姓を選びました」

登茂子は、ソファから立ち上がった稍を見上げた。

「稍ちゃんは……知ってるんやね?
(しおり)ちゃんの……本当(ほんま)のお父さんのこと」

稍はしっかりと肯いた。

「せやから……栞を、父の姓にはしとかれへん、って思いました。それで、あたしも一緒に『八木』になりました」

「……オカン」

智史が自分の母を見下ろした。

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