偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

稍は智史にしがみついた。

「さとくん……さとくん……さとくんっ」

そう何度も名を呼び、ちいさな子どものように泣き出した。

「やや……ずっと、さとくんに会いとうて、会いとうて……たまらんかったっ」

智史が、ちいさな女の子に(かえ)ってしまった稍を、ぎゅーっと力いっぱい抱きしめる。

「やや……さとくんが突然おらへんようになって、(さみ)しゅうて寂しゅうて、たまらんかったぁっ」

先刻(さっき)までの智史に組み敷かれて淫らな姿態を見せていた稍とは、別人のようだ。

智史はそんな稍の髪を、(いた)わるようにやわらかく、いとおしむように甘く撫でた。


そして……耳元で(ささや)いた。

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