偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「ややちゃんっ!」

大きな声がして、見上げると、そこに智史がいた。どうやら、無事だったようだ。ケガもないらしい。

「さとくんっ!」

稍は智史の元に駆け寄った。

智史はスウェットしか着ていなかった。
痩せた身体(からだ)の彼は、寒さが得意ではない。
ぶるっ、と身を震わせた。吐く息が白い。

「さとくん、ややは家からブランケット持ってきたから、(ぬく)いよ」

稍はマントのように巻いていたブランケットの中に智史を(いざな)った。

「……ややちゃん、エラいなぁ。ぼくなんか、家から出るのだけで精いっぱいやったわ」

智史は稍のブランケットの中へ入ってきた。

「おかあさんに言われて持ってきとうだけや。
あっ、さとくん、めっちゃ冷たい……」

稍は智史の方に身を寄せてあげた。

「うん……ややちゃんは、めっちゃ温いなぁ」


そのときである。
一際(ひときわ)、大きな揺れが起こった。

ブランケットの中の二人は、びっくりして思わず互いに抱きついた。

すると、大きな音がして、顔を上げると、目の前の並びの家が突然、次々と崩れはじめ、あとはあれよあれよという間にひしゃげていった。

二人は声もなく、呆然としたまま、ただその光景を見つめることしかできなかった。

< 375 / 606 >

この作品をシェア

pagetop