偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「さぁ、稍、行くぞ……いよいよ、や」
智史が立ち上がった。
「おまえ……あの指輪は?」
稍はこの前、東京の華丸で購入した黒のレディ・ディオールから、空色のリングケースを取り出す。
『一つ持っておくと、ちゃんとした店で食事するときやパーティなんかの改まった席でも使えて重宝するよ』
オーソドックスなデザインのレディ・ディオールは、そう小笠原から勧められて智史が値段も見ずに買ったものだ。確かに、今日のようなマキシ丈のワンピにもよく合う。
智史がリングケースをぱかっ、と開けて中から指輪を取り出し、稍の左手薬指にはめた。
ティファニーのハーモニーの婚約指輪だ。
稍はリングを見て、はっ、と思い出す。