偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「昼過ぎたけど、なにか食うか?」
智史が訊いてきた。
「おかあさんにもお昼勧められたけど、お腹いっぱいやからって断ったやん。智くんはお腹空いたん?」
朝ごはんをはちきれんばかりに食べてしまったツケはまだ残っていた。
「いや、おれもまだ腹減らへんな。
……生田神社の裏にでも行って、腹ごなしの『運動』でもするか?シャワー浴びてスーツも着替えられるし、一石二鳥やな」
……はぁっ? なに考えてんのよっ⁉︎
「あんな話」をしたあとやのにっ!
いくらあたしがセフレでもひどすぎるっ!
「あたし、友達にお土産買いたいの。新幹線の時間もあるし、そんなことしてるヒマなんてないし」
稍は流れていく車窓に目を遣った。
「わかった……忙しないのは満足できへんから、帰ってから家でじっくり、ってことやな?」
智史は勝手な「解釈」をした。
「いやいやいや……全っ然、違うしっ」
稍はあわてて智史の方に振り向いた。
ちょうど、赤信号に引っかかって停車したところだった。
智史の顔が近づいてくる。
反射的に、稍は目を瞑ってしまう。