偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……稍、頼むから落ち着いてくれ。なに言うてんねん?おまえはセフレなんかやない」

突っ伏す稍に、智史が真剣に語りかける。

「おまえは、おれにとって、今も昔も、おれのたった一人の『()本命』や。
今も昔も、おれが嫁にしたい女はおまえしかおらへん」

そして、深ーいため息を一つ吐く。

「四月から派遣社員としてステーショナリーネットに来ることになったおまえを、おれがどれだけ楽しみにしてたか知らんやろ?
本当(ほんま)は別の課に配属されるおまえを、和哉さんに直談判して、無理矢理おれのチームに入れてもらってんぞ……せやのに、おまえはあんなへんてこりんな格好で現れやがって」

自然と語尾には怒気が含まれていく。

「おまえがおれを避けとったんはわかってたけど、毎日一緒に仕事するようになって、やっぱりおまえを……また好きになっとった。一生おれの(そば)に置きたい、って思うくらいにな。
それで、創立記念パーティのときに、今度は社長に直談判しておまえを嘱託社員にしてもろたんや……社長からは逆に、今まで『御令嬢』との縁談を勧めて悪かったな、って言われたぞ」

突っ伏した稍の背をやさしく撫でる。

稍を気に入った山口には、入籍後なら「本当の稍」を見せても大丈夫だろうと思っていた。
牽制の限りを尽くしたはずだが、甘かった。

だが、この部屋を出て行く際に、しっかりと脅しておいた。

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