偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

昨今の証券会社はネット証券の台頭で、勢力図が激変した。

あさひ証券のような、そこそこ老舗の中途半端なところが一番煽りを喰らい、業績は悪化の一途だ。

そこで、創業家の血筋でアメリカの名門コロンビア大学の経営学修士(M B A)を持つ御曹司を、本社の中枢である経営企画本部長に大抜擢した。
今は、抜本的な改革を(おこな)っている真っ最中だ。

それは、店頭で接客していた人員を電話やネットで受付するオペレーターに配置転換するところから始まり、事務職も含めて全社員に一種外務員資格の取得を義務付け、さらに営業職においては行く行くは証券アナリストの取得者のみで固める、という方針だった。

稍は事務職なのでとりあえず「一種」を取得するだけでよかったが、難関の証券アナリストを取得しなければならない営業職は、日頃の激務もあって脱落者が続出し会社を去って行った。

結果的に大リストラが敢行されることとなった。気がつけば、事務職の同期はみんな結婚や出産や転職などで退職し、稍はいつの間にか一人残されていた。

のんびりとした社風は、今となっては昔の話だ。
稍が辞めたいと思ったのは、それもある。

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